第2回 超小さい小物入れの設計

第2回 3dプリンター教室のアクティビティーとして、勘合(はめあい)の部分に触れていきたいと思います。上の写真のものは、今回のために作った小物入れ?で、工房のJGAurora A3Sで出力しています。

 この教室では、ある程度3DCADの使い方は覚えたけど、で・・・?のような方を対象に、具体例を使って、どのように設計を進めたらよいかを示していきたいと思っています。

 3D CAD として、無償で誰でも使えるFreeCAD というソフトを使っていきますが、なるべく汎用に、参考になるように書いていきたいと思っています。

 さて、このような箱を作るときは、本体部分の凸部とフタ部分の凹部がきちんと合うことが必要です。このような構造を、勘合といいます。

 勘合とは、嵌め合わさる部分のことです。たとえば、箱の本体とフタ部分で、寸法が同じでは入らないところ、本体の方をフタの内寸よりわずかに小さくすることで嵌まるようになります。

 この、「わずかに」のところが、実際はどうなの? というお話です。わずかに が足りないと入らないことになり、大きすぎるとガタガタになってしまいます。なので、”いい加減” に決める必要があります。

 一般的な機械工作の中では、加工の精度なども考慮し、すきまの寸法を設計するものですが、3Dプリンターでものをつくる場合は、加工の精度は機械の出たなりしかできないので、ある程度定番のすきま寸法をつくることができます。

 デジタル工房あいおいで使っている機械は、X,Y方向に0.2mmずつ膨らむことがわかっているので、ウチではこれも考慮して設計しています。

 結論からいうと、以下のような感じで決めてます。

はめ合いの感じ すきま
ガタがある感じ 0.6mm
スルスル動く感じ 0.4mm
嵌まるけど動かない感じ 0.3mm
押し込む感じ 0.2mm

 こんな感じでいくつか作ってみたので、結果を見てみてください。 

 動画では、直径22mm、内径 16mm、高さ 22mm の筒型の小物入れ?をつくって、はめ合いの感じを撮影しています。ちなみにこのサイズでは、パチンコ玉が3つしか入りません。
 フタに刻まれた数字がすきまを表しています。すきまの寸法によって、0.6mmでは、明らかにガタがある感じ、0.4mmでは、ほぼガタは感じないけど、パチンコ玉3つの重さで開く感じ、0.3mmでは、パチンコ玉の重さでは開かないけど、振ると開く感じ。0.2mmでは、押し込まないと入らないで、入れると、振っても開かない感じとなりました。動画では手を叩きつけて開くまで振ってます。

 現実には、同じ寸法でも、押し込むことで、本体側もフタ側も変形するため入ります。これには、はめ合う部分の周長や厚さ、形状などが複雑に絡むとても難しい問題です。なので、丸や四角でないはめ合いをつくるときには、ある程度試行錯誤が必要になると思います。

 

 勘合部分の断面図は下図のようになります。

 高さ方向の寸法も、少し気をつける必要があります。本体側の凸部の高さと、フタ側の凹部の高さが同じだと、仕上がりの寸法が、本体側の凸部が高かった場合、外側を見たときにピッタリくっつかず、すきまが空いてしまうことがあります。そのため、加工精度を考慮してあらかじめフタ側の凹部を深くしておくと、必ず隙間なく締まります。

 

  逆に、開く部分をわかりやすくするとか、開けやすくするとかのためわざとすきまを開けることもあると思います。その場合は、フタ側の凹部を浅くしておきます。

 

 今回、この勘合の感じを確かめるためにフタ部分をたくさん作りました。

 このように、同じようなものをたくさん作るときは、ひとつずつ作ると大変なので、ひとつ作ったものをコピーして、モデルビューのプロパティーから直接編集してしまうのがラクです。今回は、フタ側の凹部をつくるチューブの外形を変えています。

 

 また、今回のように勘合部分を縦方向に積層した場合、開け閉めする方向に段々になっていますが、何回か開け閉めするたびに若干すり減ってゆるくなる方向に変わりますので、その部分も考慮して寸法を決める必要があるかと思います。

 必要なら、はめ合いの部分だけをモデルで作成して、造形して確かめるなども必要かと思いますが、3Dプリンターがあれば、簡単に、即時にやってみることができてしまうので、非常に便利しています。

具体的な操作方法などお問い合わせはこちら

お問合わせから、リクエストお持ちしております。